如何(いか)なる憬れにも充(み)たされぬところに、慾望の波に喘(あえ)ぐ人間の悩みがある。慾望からのがれることのできない憧れは、次から次へと消えて、所詮、あてもなき漂泊の旅をつづけなければならない。