蝋燭は彼自身を燃やす他に他意もなければ野心もなく、一心に自分を灯(とも)して行く他ありません。たとへ彼の垂れた蝋が畳を汚すことがあらうと、敷物を汚すことがあらうと、彼自身にはそれに就(つ)いて私は灯っていますと云(い)うことより一言も云いやうがないのです。何と云われやうとも黙って灯って行く他に途(みち)はないのです。