曽野綾子
@01gr38njtnnmn15z8dmw8f45tt
1931年9月17日に東京府南葛飾郡本田町(現・葛飾区立石)に町田英治郎とキワの二女として生まれ、1934年に大森区田園調布に移住した。聖心女子大学文学部英文科を卒業し、小説家としてのキャリアをスタート。『遠来の客たち』が芥川賞候補に挙がり、出世作となった。以後、宗教、社会問題などをテーマに幅広く執筆活動を展開。近年は生き方や老い方をテーマとしたエッセイを多く書き、保守的な論者としても知られる。現役時代は日本財団会長、日本郵政取締役を務め、文化功労者としても表彰され、今もなお多くの作品を発表し続けている。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr38njtnnmn15z8dmw8f45tt/01hc43h527p4db2spx5h4e21xd.webp)
自分らしくいる。自分でいる。自分を静かに保つ。自分を隠さない。自分でいることに力まない。自分をやたらに誇りもしない。同時に自分だけが被害者のように憐れみも貶(おとし)めもしない。自分だけが大事と思わない癖をつける。自分を人と比べない。これらはすべて精神の姿勢のいい人の特徴である。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr38njtnnmn15z8dmw8f45tt/01hc43h527p4db2spx5h4e21xd.webp)
人にはできることもあれば、できないこともある。得意なものもあれば、どうしても不得意なものもある。それが一人の人間が持っている光と影なのです。光にばかり目を向けるのではなく、影の部分もしっかりと見据えることが大切です。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr38njtnnmn15z8dmw8f45tt/01hc43h527p4db2spx5h4e21xd.webp)
自分や周りにある影に目をつむり、光ばかりを見ようとする子供たち。それは幸福でなければならないという強迫観念に取りつかれた社会が生んだ産物でしょう。光しか見ないから、ちょっと影に入るとイライラしたりキレたりする。それは決して幸せな姿とは言えません。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr38njtnnmn15z8dmw8f45tt/01hc43h527p4db2spx5h4e21xd.webp)
幸せと不幸せ。それはいつも半分半分なのです。どんなに裕福な人にも、不幸せは半分ある。貧困に喘(あえ)いでいる人でも、人生の半分は幸せだと感じることがある。それが人間というもの。そして、少しだけでも幸せの割合を多くしたい。そのために努力をすることが人生なのではないでしょうか。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr38njtnnmn15z8dmw8f45tt/01hc43h527p4db2spx5h4e21xd.webp)
私の経験からすると、多くの場合、疑った相手はいい人なのである。すると疑った人間(私)は恥じることになる。しかし疑わずに騙されて、相手を深く恨んだりなじったりするよりは、疑ったことを一人で恥じる方が始末が簡単なのである。しかも疑った相手がよい人であったとわかった時の幸福はまた、倍の強さで感じられる。