夏目漱石
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夏目漱石は日本を代表する作家である。明治末期から大正初期にかけて活躍し、今日に通用する言文一致の現代書き言葉を作った近代日本文学の文豪のうちの一人である。また小説『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『三四郎』『それから』『こゝろ』『明暗』などの名作も誰もが知るようになっている。学問のみならず俳句も学び、講演録に「私の個人主義」など格調高い思想を代表するものを書いた。
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(雲雀(ひばり)は)のどかな春の日を鳴き尽くし、鳴きあかし、又鳴き暮らさなければ気が済まんと見える。その上どこまでも登って行く、いつまでも登って行く。雲雀は屹度(きっと)雲の中で死ぬに相違ない。登り詰めた揚句(あげく)は、流れて雲に入(い)って、漂うているうちに形は消えてなくなって、只(ただ)声だけが空の裡(うち)に残るのかも知れない。
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もし人格のないものが無闇(むやみ)に個性を発展させようとすると、他(ひと)を妨害する。権力を用いようとすると、濫用(らんよう)に流れる。金力を使おうとすれば、社会の腐敗をもたらす。随分危険な現象を呈するに至るのです。
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考えてみると世間の大部分の人は悪くなることを奨励しているように思う。悪くならなければ社会に成功はしないものと信じているらしい。たまに正直な純粋な人を見ると、坊っちゃんだの小僧だのと難癖をつけて軽蔑する。