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野上弥生子

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野上弥生子は、夏目漱石の紹介で『縁』を発表して以来、大分県臼杵市出身の写実主義に根差す作風と、理知的リアリズムとで市民的良識を描き続け、明治から昭和末期まで80年余の作家活動を行った、日本の現役作家である。法政大学女子を卒業し、小説家として文化勲章受章なども果たしている。

女性である前にまず人間であれ。
人間もときどき地球をはなれて火星に転地旅行でもすることができるようになったら、今より地球のことも客観的に考えられて、人類がもっとずっとリコウになりはしないかしら、なんて考える。
人にお世辞を云(い)うのは、云う人が考えるほど効果的ではない。
いかに見栄えのしない草でも春とともに花になるように、人は恋することによってそれ自身を花咲かせる。
平和な仲のよい夫婦ほどお互いにむずかしい努力をしあっているのだ、と云(い)うことを見遁(みのが)してはならない。
愛と憎しみは双生児である。愛すればこそ憎むし、憎むほどの想いがあって初めて愛するのだ。
花の咲く草ばかりでなく、名もない雑草も、とげ草も、矢張り野に生(お)うる権利を授かっている。
花が露によって一層美しい如く、涙の中の悲しい愛も、それゆえに美しい愛である。