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貝原益軒

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貝原益軒は、江戸時代の本草学者、儒学者であり、福岡藩士出身である。50年以上にわたり著述を残し、経学、医学、民俗、歴史、地理、教育などの分野において先駆者的な業績を挙げた。貝原は1648年、18歳で福岡藩に仕えたが、2代藩主黒田忠之の怒りに触れ、7年間の浪人生活を送ることとなった。その後、27歳のときに3代藩主光之に許され帰藩し、藩費による京都留学を行った。7年間の留学の後、黒田藩の祐筆に就任した。

病ある人、養生の道をば、かたく慎みて、病をば、憂い苦しむべからず。憂い苦しめば、気ふさがりて、病くわわる。
志を立つるは大にして高きを欲し、小にして低きを欲せず。
心は豊かにすべきであり、苦しんでばかりいてはならない。体は大いにこれを使い、働かせるべきで、休めすぎてはいけない。自分の心身を過保護にすべきではない。美酒を飲みすぎ、色を好み、体をいたわりもせず、怠け、横になってばかりいるのは、自分自身を過保護にするだけで、かえって体には害となる。
朋友の間、悪しきことならば面前に言うべし、陰にて謗(そし)るべからず。後ろめたく聞こゆ。面前にて其(その)過(あやまち)を責め、陰にて其善を褒むべし。
すべてに完璧を求めれば求めるほど、心は満たされず不満にさいなまれる。ここからいろいろな問題が起こってくるのだ。
体気弱く、飲食少なく、常に病多くして、短命ならんと思う人、かえって長生きする人多し。是(これ)弱気をおそれて、つつしむによれり。
命短ければ天下四海の富を得ても益なし。財の山を前につんでも用なし。しかれば道に従い身を保ちて長命なるほど大なる福なし。
軍法は畏(おそ)るるをもって本とすべし、畏るるとは暴勇を慎んで用心するをいうものなり。臆病にはあらず。
酒を多く飲んで飯を少なく食う人は命短し。
身に奉ずること薄きを倹約とし、人に施すこと薄きを吝嗇(りんしょく)とす。
勇者は外を焦らず良く定まってのち応ず。外に気を動かして軽々しく躁(さわ)がしきは、内に敵に応ずべき根(こん)なし。人に勝ち難し。
人、学問なく、道をしらざれば、人の道たたず、人、とかく生まれ付きたるかひなし。
怒りと欲をこらえざれば、善は行いがたし。
志を立つることは大にして高くすべし。小にして低ければ、小成に安(やす)んじて成就しがたし。天下第一等の人とならんと平生(へいぜい)志すべし。
人の目は百里の遠きを見れども、その背を見ず。明鏡といえどもその裏を照らさず。
小にして低ければ小成に安んじ、大にして高ければ大成を期す。およそ事は上(じょう)を学びて中(ちゅう)に至り、中を学びて下(げ)に至るものなり。故(ゆえ)に天下一等の人たるを志すべし。
百病は皆気より生ず。病とは気病む也(なり)。故(ゆえ)に養生の道は気を調(ととのう)るにあり。
養生の要は自ら欺くことをいましめて、よく忍(しのぶ)にあり。
言語をつつしみて、無用の言をはぶき、言を少なくすべし。多く言語すれば、必ず気へりて、また気のぼる。甚だ元気をそこなふ。言語をつつしむも、また徳をやしなひ、身をやしなふ道なり。
君子の財をみだりに用ひずして惜しむは、人に益あることに財を用ひんが為也。
老後一日楽しまずして空しく過ごすは惜しむべし。老後の一日、千金にあたるべし。
飲食は飢渇をやめんためなれば、飢渇だにやみなば其上(そのうえ)にむさぼらず、ほしいままにすべからず。
およそ小児の教えは早くすべし。
敵と戦うに勝ちすぎては、敵とって返して強く戦うものなれば、初めの勝ちにて早くやめるが後に禍(わざわい)なし。大いに勝たず、また大いに負くる事なし。これ良将の兵法なり。
よろづの事はそのはじめを正しくするにあり。
女に四行(しこう)あり。一に婦徳、二に婦言(ふげん)、三に婦容、四に婦功。この四(し)は女のつとめ行うべきわざ也(なり)。
交わる人をえらぶべし。古き諺に、朱に交われば赤し。墨に近づけば黒しといえるが如(ごと)し。
兵戦ははやりすぎて勇むを貴ばず、静まりて堪(こら)えるを貴ぶ。敵に勝つ道は堪(こら)え忍ぶにあり。先に動く者は負け、後に起こる者は勝つ。忍ぶはまことに一字千金の兵法なり。
天下のこと、わが力に為し難きことはただ天に任せおくべし。その心を苦しむは愚なり。
知って行わざれば知らざるに同じ。
酒は微酔に飲み、花は半開に見る。
費(つい)え多き遊びをまず早く戒(いまし)むべし。これを好めば、その心必ず放逸(ほういつ)になる。幼きより好めば、その心癖となり、一生その好みやまざるものなり。
世俗は耳目口腹の欲をほしいままにするを楽とす。
善人に交われば、その善を見ならい、善言を聞き、わが誤りを聞きて益多し。悪友に交われば、はやく悪に移りやすし。必ず友を選びて、かりそめにも悪友に交わるべからず。
喜怒の時、耐えて事すべからず。喜びもやみ、怒りもやみ、常の心になりて後、事を行なうべし。
養生の道は、元気を保つことが根本である。これにはふたつの方法がある。ひとつは元気をそこなう原因を取り去り、生気をとりもどすこと。もうひとつは、元気をとりもどしたならば飲食と日頃の活動に気をつけて元気を養うこと。
朝早く送るは、家の栄ゆる印なり。遅く送る家は衰えるものなり。
人の礼法あるは水の堤防あるが如し。水に堤防あれば氾濫の害なく、人に礼法あれば悪事生ぜず。
人間の最も悲惨な状態、それは侮辱されることに慣れていくことである。
家を治(おさ)むるにも忍(にん)の字を用(もち)うべし。忍とは耐えるなり。堪忍するをいう。驕(おごり)をおさえて欲を恣(ほしいまま)にせざるもこらえるなり。
酒は天の美禄(びろく)なり。少し飲めば陽気を助け、血気をやわらげ、食気(くいけ)をめぐらし、愁(うれい)を去り、興を発して甚(はなは)だ人に益あり。
心は楽しむべし、苦しむべからず。身は労すべし、やすめ過ごすべからず。およそわが身を愛し過ごすべからず。
人と過ちを同じうすべし、人と功を同じうすべからず。功を同じくすれば相忌(い)む。人と患難(かんなん)を共にすべし、人と安楽を共にすべからず。安楽なれば即ち相仇(きゅう)す。
老後は、若き時より、月日の早きこと、十倍なれば、一日を十日とし、十日を百日とし、一月(ひとつき)を一年とし、喜楽して、あだに日を暮らすべからず。
人生まれて学ばざれば生まれざるに同じ。
知慮ありて、よく是非(ぜひ)を分別できる朋友を、平生(へいぜい)より求めて、常に親しく交わり、大事あるとき、その人の思慮を借りて用(もち)うべし。
わが身のあしきことを知らせ、過ちをいさむる人は、尊み、親しむべし。
命の長短は身の強弱によらず、慎と不慎とによれり。
人に三愚あり。我をほめ、子をほめ、妻をほむる、皆是(これ)愛におぼるる也(なり)。
一切の病にみだりに薬を服すべからず。病の災(わざわい)より薬の災多し。
酒を少しく飲めば益多く、多く飲めば損多し。
学んで道を知らざれば学ばざるに同じ。
養生の術は、まず心気を養うべし。心をやわらかにし、気を平らかにし、怒りと欲とをおさえ、うれひ、思いをすくなくし、心をくるしめず、気をそこなわず、これ心気を養う要道なり。
心を平らにし、気を和やかにす。これ身を養い、徳を養うの工夫。