香山リカ
@01GR36E3QTKY0CHC0WT65NSBSS
1960年に札幌市で生まれる。小樽市で育つ。東京学芸大学附属高等学校を経て、東京医科大学卒業。精神科医、評論家。元・立教大学現代心理学部映像身体学科教授。教授、臨床心理士、評論家、エッセイスト、政治活動家、ニューウェーブ雑誌『HEAVEN』編集長代理、ピースボート水先案内人、小樽ふれあい観光大使を務めている。ミュージシャンの中塚圭骸は実弟である。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
夫に特別な問題があるわけでもないのに、「結婚は失敗だったかもしれない」という人たちにとっては「結婚できたこと」「結婚生活がそれまで継続していること」、さらには「子どもがいること」は最初から当然のこと、という前提があり、その上で「ほかにもっと幸福な人がいる」「自分は不幸だ」と思っているのではないだろうか。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
どんなときでも100パーセント、正しい適切な判断ができる人はいない。「まあ、いまのところはそう思っているのだけれど、もうちょっと様子を見てみないと何とも言えないね」といったあいまいさを認めるゆとりが、社会にも人々にも必要なのではないだろうか。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
自分の不安を認めた瞬間、これまで「あいつが悪いんだ」と攻撃の対象にしてきた外的の怪物は幻のように消えてしまい、その怪物は実は自分の心の中に住んでいましたとさ、というブラックなおとぎ話のような結末が待っている。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
スポーツ大会に出る人は、優勝する自分をイメージしたら、そこで感激の涙を流したり、躍り上がって喜ぶくらいのところまでいったほうがいい。先に感動まで体験してしまうのは悪いことでも恥ずかしいことでもなく、イメージをプレッシャーに変えないためには重要なことなのです。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
「わかってくれなくて当たり前」と思って、はじめは行き違いや食い違いが生じても、腹を立てたり、がっかりしたりせずに会話を続けていく。これもコミュニケーションの基本の一つのはずだが、若い世代にはできない人が多い。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
「私は特別」と思っている人は、好きなアーティストや作家のチョイスもそれなりに特別のことが多く、同世代の友だちがあまり知らない人の名前をあげることが自己愛の充填(じゅうてん)に一役買っている場合さえある。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
成功者であればあるほど、「私の成功は努力の結果だ。 たとえ恵まれない状況に生まれていても、私の場合は、努力で今日の成功を勝ち取っていただろう」と考えることで、自分の成功は必然であり、不動のものであることを自分に納得させようとする。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
やさしくきれいだったお母さんがあなたのお母さんの本当の姿で、いま(認知症の)病気に苦しむ姿を“これが私のお母さんの姿なんだ”と思う必要はありません。本当のお母さんの別バージョンというかオマケだと思って、一生懸命、看護してあげてくださいね。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
家族として生きない人が増えるということは、「何のために私は働くの?」と労働の意味や意義を求める人が増えるということでもある。しかし、その疑問にしっかり答えられるほどの充実感や満足感を与えてくれる労働は、世の中にそう多くない。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
(就職に関する)最も深刻かつ本質的な問題は、「仕事とは、それを通して自己実現を果たす手段」と言われてあれこれ考え、ついに「私にとって本当にやりたい仕事とは、これだ」という解答が得られたとしても、その仕事に就くことは困難である、ということだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
この世界の中でからだや顔を持つということは、他者の中で「なにものかであり続ける」ということから逃れられないということ。だからこそ人は、いつも必ずその他者からの視線を感じ、その中でしか自分の顔やからだを確認するしかない。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
親との葛藤の経験が乏しい人は、上の世代に対して否定的な感情を抱いたときに、どうやってそれを表現してよいのかわからず戸惑う。そして、そのままグッと我慢してしまうか、あるときいきなりキレたり、「もう辞めます」と辞表を出したりしてしまうことになるのだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
自分とは異なる世代、立場の人と、すぐに理解し合えないのは当たり前。ましてはそれが親子、兄弟といった濃い関係であれば、そこに憎しみ、ときとして殺意といった激しい感情が生まれるのも決してめずらしいことではない。大切なのはそこで自分の気持ちを抑え込むことではなく、「お父さん、僕はそうは思わないよ」と気持ちをまず言葉で表現することだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
いくら「○○大学卒」という肩書きやそれなりの収入があっても、それは自分が生まれた意味や自分のかけがえのなさを与えてくれるものではない。そして、「私はこのために生まれた」という手ごたえがなければ、いくら豊かな生活を送っていても人生は無意味なものに思える。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
人間には、いったんある状況に置かれると、比較する対象が同じ状況の中の人──それも自分より幸福そうな人──だけに限られ、自分が前にいた状況、ほかの状況の人たちのことはきれいさっぱり忘れてしまう、という不思議な性質があるようだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
「意識が回復する可能性もないのに、いたずらに生存させておくのは本人の尊厳を傷つける」という考え方には、私は反対である。たかだか人生の最後の数ヵ月や数日で、その人の人生全体の尊厳が損なわれることはない、と思うからだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
本来であれば、成功者たちには、そうでない人たちのために自分の持っているものや知恵を使う役目があるはずなのだが、ほとんどの人(=成功者)は「それよりももっと(自分が)成功することを考えましょう」と前を向こうとするばかりだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
「自分探しをしよう」などといいながら、人はいつのまにか、自分の外にある世間や社会のなかに「こんな自分でいたい」「こんな私ならウケるかもしれない」「多数派であるためにはこうでなきゃ」といった“あるべき私、ありたい私”を見つけようとしてしまうのだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
世界中で動物愛護活動をする人の多くが、「人間より動物が大事」という考えにとりつかれている。はじめは「人間の都合を優先するのはやめよう」あるいは「動物と人間の共存」と穏やかなことを言っているのだが、いつの間にか「動物のためには人間が我慢すべきだ」、さらには「動物のためには人間が多少、犠牲になっても仕方ない」という極端な考えにまで発展しがちなのだ。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
自分とは異なる年齢の家族がともに暮らす家庭というのは、反感、嫉妬、敵意など否定的感情の巣窟(そうくつ)である。同時にそれは、そういった感情をどう表現して問題を解決していくかというトレーニングの場にもなる。
![](https://pub-fd1245aabf684a24bea07fd8af5b3432.r2.dev/ref/01gr36e3qtky0chc0wt65nsbss/01hc4g52y2yb4zf099rxg4vjs3.webp)
「私にとって仕事とは?」「私にとって結婚とは?」と、本来、非常に具体的、現実的であるはずのテーマを観念的に考え始めると、人の思考はかぎりなく自分の内面に向かってしまい、結局は仕事や結婚についてではなくて、自分自身について悩むことになってしまう。そしてその結果、「とりあえず働こう」「とりあえず結婚しよう」ではなくて、「わからないならやめておこう」と現実に足を踏み出すのを断念してしまうのも、現在の就職と結婚の問題に共通した傾向である。